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女流文学賞受賞作【溺レる】 川上弘美

こんにちは!
今日のレビューはなかなか難しかったなぁ。。。
と少し疲れた長女のミカヅキモです。笑
がっつり恋愛小説のレビューなもんで、しかもさ、かなりぶっとんだ恋愛短編集で、
なにって言葉にできにくいのよ。
してみたけども。

参考に読んでもらえたら嬉しいよ~

現実に惜しみがないという恐怖

学生時代、とくに幼少期から中学生くらいまでは
自分はどちらかというと不運よりだと思い込んでいたヅキモは、
んーーーまぁ、根暗気味やったよね。たぶん。

何しにこの地球に産まれちゃったんやろーとか、
別に今私が死んでも地球はなんにも変わらんのに生きていかなあかんのかなー

なんてことをどっか常に思ってた。←暗

そういう人ってさ、ちょっと地球の磁力から浮いてる。
現実に押し止めている何かがないもんやから、
逆に言うとなにしでかすかわからんというか。
ということは、現実主義者たちからは想像のできない破天荒をやっちゃうおそれがあるのよね。
この本は、そんな地球の磁力から浮いてる人たちパラダイスな恋愛本で、
ずっと怖い。笑

生活のルールって、人としてのルールやったりもするわけで、
悪いことしたら自分だけじゃなくて、会社に迷惑かけるな、とか、
家族が悲しむなとか痛い目にあうよな、とか
理性的に思えるから守れるやん。
でも、会社とか家族とかどうでもよくって、
目の前の人との恋愛だけが地球に繋ぎ止めてるすべてやったとしたら、、、、
え、怖っ。
それもさ、相手の男性がものすごく理性的で現実主義ならまだしも、
その相手すら同じように現実から逃げてきたタイプが多いもんで、
読みながら、更に怖い。笑

でも、作者は言葉で多くのだめっぷりの説明を入れたりは全くしてなくて、
まさに溺れる二人の雰囲気をいくつもの短編にわけて書いてる。
時には心中したり、霊になっても溺れ続けてたり、ひたすら逃げたり、、、。

文字通り、『目の前の人のためだけにある人生』ならば、
国の定めた法律やルールなんて必要なくて、
二人だけが良いと思えることだけが全てになっていく、、、
恋愛の最果て(天国じゃなくて地獄より)みたいな雰囲気を味わっちゃいました。

どうしようもない人たちの魅力

この本にでてくる人たち全てがほんとにどうしようもない。笑

家族があるのに浮気のはてに心中を試みようとしたり、
何かからひたすら逃げ続けたり、
当時の恋愛に縛り付けられて、死んでなお死にきれなかったり、、、
ほんとにどうしようもなくて、見るにたえないのに、
嫌いになれない。

途中、なんでこんな最果ての恋愛小説をよんているのだろう?
と、
『???』となるのだけれど、
やめられない。

読みたいわけじゃないのに読んでしまった。
そんな風に読後思ったんやけど、
なんで読んじゃったのか、なんで登場人物に嫌いな人が一人もいないか、
について考えてみた

答えは意外にも簡単で、
私に『どうしようもない要素』がしっかりあるからなんや、
と思い至りました。

仕事がなければ、朝はいつまでもだらだら眠っていたいし、
そのあとだって、
コーラ片手にいつまでもだらだらゲームしたり本読んだりしながら過ごしたい。

社会という制約があるから、
朝頑張って目覚めるし、会社に出向く。

人に少しでもよくみられたいから、
笑顔にもなるし、太りすぎには注意する笑

ただ、その社会的制約がなく、
超大金持ちのお嬢様だったら、、、???

なんかすごーーーくヤバい気がする。笑

今現在、私のどうしようもない要素は、
いろんな制約で最小限にとどめさせてもらっているけど、
その制約をはねのけるだけの財力があれば、

この小説にでてくるとうしようもない人たちをしのぐ勢いで、
どうしようもなくなるのかもしれない。

登場人物のどうしようもなさが、
自分のどうしようもなさに重なって、
きっと嫌いになれないし、

ある意味、どうしようもなくなれるほど誰かに溺れることへのほんの少しの憧れなんかが、
この本のページをめくらせている気がする。

お金があるからどうしようもなくなるのではなく、
目の前の人のせいでどうしようもなくなるって
ちょっと甘美でしょ。女子たち。

そんな風になれるって、
やっぱりちょっと魅力にうつってしまうのかもしれない。

恋愛の毒気

こんな最果てのような恋愛はしたことがない。

誰かと心中しよう、とか、
会えば(会わずとも)性欲に支配されるよう恋愛とか。
この小説を読むと、
私はなんていたって健全な青春小説のような恋愛をしてきたのだろうと思う。

なのに、なんかわかるんよ。
一緒に死のうと言われて、
少し嬉しいような気持ちになりそうなこと。

自分のことが一番大切じゃないってわかってるのに、
離れられない気持ちとか。

ものすごくおかしな命令をされているのに、
断れない気持ちとか。

死んでなお、会いたい気持ちとか。

社会生活の中では絶対に味わえない毒みたいなものが、
恋愛にはあって、

その毒が完全にまわる前にみんな、
普段の生活と折り合いをつけてるんやと思う。

登場人物たちは完全に毒がまわっちゃってたけども。

この毒の蜜が、
人として絶対しないようなことに手をださせたり、

自分をいためつけたり、時には罪までおかしちゃう。
おーこわ。

今、数多く問題としてとりあげられてる不倫とかってさ、
結婚して家族になっちゃったらこの毒気が足りなくなって、
不倫しちゃってる人、多いと思うんよね。

特に、家族は家族として、妻は妻として大切です
って思ってる人は、

恋愛の毒気だけたまーに味わいたくなるのでは?
と思ったり。

誰かを本気で好きになって味わう毒と、
毒が足りなくなって始まる恋と、
やっぱり毒の味は違うのでしょうか?
前者の方が、毒がまわりそうやね。笑

なんにせよ、恋愛にしか成しえないどん底みたいなものを
味わえる一冊でした。

恋愛真っ只中なひと、毒気に気をつけて!

・恋愛キラーな人にオススメ・女性の感性が強めなので、
 男性には理解されにくいかも!?
・恋愛に溺れたらどーなるか、気になる方に!
・題名通り、沼のような小説。
 爽やかさはないので、沼にはまりたくない人は不向き

今度はもっと爽やかな恋愛小説を読みたくなったヅキモから、
お送り致しました~~
コメント欄へのコメントは、ネタバレなしでお願いいたします(^^)/