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初読書なら「世界から猫が消えたなら」川村元気

どーもどーもミクラステリアスです。こんにちわ。
本日は映画化でも話題となった川村元気さんの小説をご紹介。
さっそくいってみたいと思いますが本日のオススメ記事、なかなか曲者となります。
ん~~~~~~~~~笑
さてどうしたものか。
とにかく少々辛口ですが読者初心者さんがおられたらぜひ最後までこの記事を読んでみてほしい。

あまりに魅力的なかわいいぬこちゃんがこっちを見ている表紙。
このぬこちゃん、非常に罪深い。
表紙買いした人も多いのでは。

活字初心者、読書初心者向けファンタジー

こちらの書、30万部以上の大ヒットかつ、本屋大賞ノミネート作である。
映画化もされ話題作。
そんな書に向けて初心者向けとはどういうことなのか!と言われそうだが
もはやそれはこっちが聞きたいくらいなのである。
あくまでぼく一人の、いち微生物の、いち意見であることを大前提に聞いてほしいのだか
この書が本屋大賞ノミネートというのはいささか??????である。

多数の小説に触れてきたミクラスの心にこの小説が読後に残してくれた感情は
なぜこの小説が本屋大賞ノミネート作だったのか?はて?という疑問にほかならない。
ちょっとばかしこの小説の気になった点を列挙してみたいと思う。

・文章が凝っているのか稚拙なのかイマイチつかめない
・作者の伝えたいことが格言のように随所に明確に記されている
・キーとなる猫という生き物にリアリティがない
・トータル的にみて内容の密度に物足りさなを感じる

以上、まぁ細かいことは多々あるのだが別に悪口を言いたいわけではないので
このあたりに絞って解説してみたいと思う。
まず文章だがラノベレベルの表現かそれ以下に感じるところもある。
いきなり言い過ぎに聞こえるかもしれないが、いち微生物の戯言だと思ってお付き合いいただきたい。
そのような文章力で作品内に散らばる具体的に明記された格言たちは何だ。
通常うまい小説家ほど、物語や心理描写から伝えたいことを明確に文章化をせずに
ストーリーや登場人物の行動で伝えてくることが多い。
また具体的に文章で伝える方法をとるのであればストーリーから説得力を持たせるものである。
しかしこちらの小説では格言のように散らばる川村元気の言葉たちにはたして説得力があるかと言われるとなんとも言えないところである。
いや正直に言おう。説得力は感じなかった。
格言の一人歩きである。
もはや格言化による価値観の押し付けのようにすら感じる。
たとえば文庫の解説に引用されている本文を少し紹介してみよう。
「プレゼントは、物、”そのもの”に意味があるのではなく、選んでいるとき、相手が喜ぶ顔を想像する”その時間”に意味がある」
一見なんとなくおしゃれに上手く表現したように見えるこちらの本文であるが
わたしに言わせればブレゼントそのものにも存分に意味があるだろう、何を言っているんだ君は。である。
これではプレゼントそのものに意味がないように聞こえる。
いいや、そう聞こえないようにおしゃれな言い方をしているのだが冷静に読めば
プレゼントそのもの自体は無意味みたいな表現になってしまっている。
そんなわけあるかいな!
おそらく作者の意図するところはプレゼントのそのものの意味を否定しているわけではないのだと思う。
しかしながら文章自体はプレゼント”そのもの”の意味をなきものにしてしまっている。
こういった点を見ればやはり文章が稚拙である印象は拭えないのである。

もうひとついこう。
「家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ」
言いたいことは推測すればわかる。
これも川村元気がドヤ顔で名言だろ?と言ってきている顔が無条件で脳内に浮かんでしまう。
しかしながらわたしから言わせれば家族は無条件でそこにあるというものでもある。
勝手に家族をあるものじゃないなどと言っていただきたくはない。
仮に、「家族は生まれてから側にあるのが当たり前だったが、大切なことは家族を「する」という意識なのではないだろうか。」
という表現であればなるほどなるほど、そうね、そうかもね。なんてハッとしたかもしれない。
要するに意味は分かるのだが文章が上手くない上に、川村元気のドヤ感が言葉についてまわるのである。
こういうドヤ格言が各所にちらばっている。
言いたいことがわかるならいちいち引っかからずにさらっと読めばいいだけのことである。
なんだかんだいって、ちゃんと意味もあるしセンスもあると思う。
だけど表現の仕方にひっかかってしまう。

なぜか。

それはおそらく、
言葉を扱うプロの作家の小説を数多く読んできたから。
そう、読書量、活字慣れ、そして上手い作家、作品、文章を多く知っているからこそ
どうしても稚拙な部分にひっかかってしまうのである。
もうこれは仕方ない。
それだけ、ぼくはそれなりに経験を積んでしまっているのだ。
今更稚拙な文章を気にせず読めといわれても、そんなことは到底不可能なのである。

逆説的に視点を変えれば大逆転

例にもってきた本文の内容も、結局、表現がちょっと難有りだとしても
作者の言いたいことは容易に伝わってくるのである。
”ちゃんとわかる”のである。
ではここからセカ猫の大逆転劇といこう。

・文章が凝っているのか稚拙なのかイマイチつかめない
こちらについて、実際、文章の上手い作家をさほど知らなければおそらく問題ないと感じる人も多いのではないか。
ラノベも物によっては非常に卓越した文章の作品もあるが基本的には読みやすい簡易な文章の作品が多い。
平易な文章であっても内容がおもしろければ十分おもしろいのである。
本書も、読書の鬼には辛い文章や表現が多いかもしれないが、読書初心者やラノベ派の人向けであれば
文章自体が壁にはまずならないだろうと思う。
なんせ、ひっかかりさえしなければ、ちゃんと作者の意図は伝わるのである。

・作者の伝えたいことが格言のように随所に明確に記されている
通常上手い作者ほどこういった格言化のような表現を避け、ストーリーや登場人物の行動で語るのだが
逆に読みなれていないと作者が言いたいことを推測しにくい場合もある。
しかし本書の場合は心配しなくても川村元気がちゃんと丁寧にドヤ顔で明記してくれている。
読者は川村元気の意図を読み損ねることなく川村元気流の視点や感性を拾うことができる。
読書の楽しみの一つは、自分とは違う作者の視点や価値観を物語の中から見つけることができることにある。
新たな価値観との出会いはどんどん自分の感性を豊かにしてくれる。
この点が明確なこの小説はそれこそ読書初心者や初読書の学生の中高生にとってはいいスタートになるかもしれない。

・キーとなる猫という生き物にリアリティがない
・トータル的にみて内容の密度に物足りさなを感じる
こちらの2点に関しても結局は読書量の問題が大きい。
そもそも猫の描写にリアリティを求めるか否かという話になるが
これもうまい作家をしっているがゆえに感じる所と言われればそれまで。
内容の密度に関してもうまい作家を・・・以下略
そもそも全ての小説の内容が濃くなくてもいいのだ。
ぼくのようにガッツリ超大作好きもいれば
午後のカフェでまったり軽い読書をしたい人もいるだろう。
本書はなかなかヘビーな感情を孕んだ小説ではあるがライトなテイストなので
軽い読書タイムにも向くと思わる。
ストーリーはわかりやすく、展開も段階を踏んで加速するタイプなので
はじめの1冊にはオススメできる。
途中で挫折して読めないとなることは滅多とないはずである。
読書中毒の猛者はこの限りではないかと思うが笑

なんだかんだ言って本屋大賞ノミネート作品

本屋大賞ってまぁ全国の書店員さんたち、
つまり結構な本好きたちの投票によって選出される賞なのだが
そこにノミネートされているんだから、
何も、読書初体験者だけが評価しているのではないのが事実だということである。
微生物風情が何をほざいていようとこれが変わらぬ事実である。
つまり世は、分かりやすい文章とわかりやすい内容を求めているということにもなる。
そもそも活字離れが進んでいると言われるこのご時世、動画サイトが全盛を振るい
読書趣味が広がる素振りなど微塵も感じない。
上中下巻の超大作、名作などよりライトな薄めの本が売れるというのもわからないでもない。
結果としてこちらの書は本屋大賞ノミネート作である。まさに時代といった感じすらある。

ミクラス的には読書の鬼にはなかなか物足りない作品に感じるのではないかなとは思うのだが
こういったライトテイストの作品が刺さる本好きが全国に多いのはまぎれもない事実だし
これを踏まえると、やはり読書初心者層においては
ハズレになりにくい、読書趣味のいいスタートになる本ではないかと思う。
この本のぼくが思う欠点は
読者初心者の方にとってはメリットになりえると感じた次第である。
これにて大逆転劇としたいと思う。

軽い軽いライトライトと言ってきたけれど
これ、自らの命と身の回りの大切なものを天秤にかけていく結構重い喪失の話でもある。
本当に読書趣味のきっかけになりえる本だとは思うので
こうしてオススメ記事などを書いていたりする。

ぼくにしたってそうである。
高校生の頃に読み出した小説で当時面白くて仕方なかった本も
今読み返すと、なんだこれは。こんなものが面白かったのか。
なんて思うかもしれない。
未経験者や初心者層がおもしろいと感じる本と
ある程度の読書量を詰んだ人が面白いと感じる本に差異が生まれるのは当然といえば当然である。

・読者初心者や読書趣味のはじめの1冊に
・個人的には読書量が多い人向けの作品ではない気がしている
・表紙買いはぬこちゃんがかわいくても注意が必要

・自分の命とそのほかの大切なものを天秤にかける喪失の物語である
・川村元気のセンスは各所に光る
・本屋大賞ノミネート作
・良くも悪くもよみやすくわかりやすい

それでは本日はこの辺で。コメント欄でのネタバレ等禁止でお願いいたします。