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歪んだ母子愛の極致 「あの日、君は何をした」まさきとしか

どーも、新たに読了、本日またしてもミステリでいく。
ミクラステリアスです、よろしくどーぞ。

母子愛の歪みの交差が生み出した悲劇と結末

この作品、傑作ミステリか!?と聞かれると、決してそうではない。
では非常に面白いのか??と聞かれると足りないところもある。
けれども、普段小説で涙を流すということがほどんどないミクラスの目に
じわりと潤いを与えたのは事実であり、この小説の力であった。
ちなみにわたしはドライアイでもないし冷血漢でもない。
ましてやサイコでもないのである。
しかし小説で泣くということはほどんどない。
かの「永遠の0」という泣けると言われる小説ですら
1滴の涙も流していないのである。
もう一度言うがドライアイでも冷血漢でもサイコでもない。信じて欲しい。
何が言いたいかと言うと、普段小説では泣かないミクラスの目を潤す力を持つ小説なので
ぜひ読んでみていただきたいということである。結論。
本日はこれにて終了!十分説得力のあるオススメ記事をかけたと思う。
それほどにミクラスの涙というのはレアなのだ。
ミクラスの涙。非常に美しい響きである。
まさにRPGに出てきそうなレアアイテムの響きである。
きっとその雫は闇を照らす黄金色の光を小さな深いブルーの水面に湛えているのだろう。
自分の涙にそんな価値と美があっただなんて・・・・最高of最高
気分がいいのでもう少しこの小説について語ることにしたいと思う。
気分が最高にいいのだ。
この小説はイヤミスだがな!!!!

無関係に見える二つの事件

まずですね。
一つめの事件が起こる。
連続殺人事件の脱走犯を追う警察に、犯人と間違われて深夜に自転車で走る中学生男子が追われることになる。
逃げ出した中学生は勢いあまりトラックに激突。死亡してしまう。
その知らせを聞いた母親は悲しみのあまり徐々に正気を保てなくなってしまう。
実際、連続殺人犯と中学生は無関係のように見え、
なぜ、深夜に一人で自転車で町を徘徊していたのか。
なぜ、警察から逃げ出したのか。
中学生の死亡には謎が残ったまま事故として処理されます。
母親は強い自責の念を抱え、夫や娘、残された家族も崩壊してしまう。

15年後、二つめの事件が起こります。
ある女性が殺害され、現場の防犯カメラに映っていた男性が重要参考人として
探されるが行方不明に。
その男の妻は、夫の突然の疾走に戸惑い、
男の母親は、息子の無実を信じるも謎の失踪に不安を隠せない。
息子が殺人容疑をかけられ失踪し、徐々に不安に苛まれるようになる母親は
その行動に異常をきたしはじめる。

この一見無関係に見える事件が当然ミステリなので繋がってくるのだが
ずっと、息子が消えてしまった母親を描いている。
《ずっと息子が消えてしまった母親》を描いているのである。
普通にきつい話だこと。
心理描写がうますぎる作家、例えば窪美澄あたりが書いていたならちょっと読むのもしんどくなるほど
悲しみと狂気を感じてしまうだろうが、著者はミステリ作家である。
正直心理描写などは卓越しているとうほどのこともないので
圧倒的悲しみに溺れてしまうことなく読めてしまう。
狂気に関しても背筋が凍るような貴志祐介ほどの筆力はない。
かといって下手くそであるということではなくて
ミステリとしてボジティブに捉えて、
ディープになりすぎずに作者の意図も十分伝わるレベルで面白くサクサクよめる。
この本、活字初心者にはめちゃくちゃ面白く読めると思う。
窪美澄と貴志祐介とかいう筆力の鬼作家を知っているとちょっと物足りなくは感じるかもしれんけど
多くの作家に彼らのような筆力を求めても仕方がない。
筆力を求めるのなら筆力の高い作家ばかり読めばいいのである。
でも小説の魅力は決して筆力だけで語られるものではない。
この小説の魅力が筆力とは別のところにあるというだけのことだ。
そしてその魅力は高く評価されてもいいと思っている。

特筆すべきは2つの事件の繋がりと因果が
非常に練られており、
たまらなく悲しく、そして救われる場面があったこと。
その場面の演出、控え目に言ってすっごい良かった。
美しく非常にレアなミクラスの涙の精製の瞬間である。ふふ

そしてイヤミスに分類されるような結末なのではあるが、
その結末さえ、ある意味、ぼくには救いに思えた。
イヤミスの結末がある意味救いって、そんなことある!?
あんまないよね!?
なんといっていいか、この複雑な読み味こそ
この作品のアイデンティティであり、秀逸なところである。
とっても複雑だけれど、あの日、君が何をしたのか、
ぜひともその目で確かめてほしいと思う。

推理はしても無駄

この小説、真実は予測できないようになっている。
読みながらここまでの情報で真相を推理してやる!なんて意気込んでも無駄である。
ぼくはとにかく色々考えながら読んだりしてしまう癖があるのだが
全部徒労におわった。いい加減にしてほしい。
それこそ泣きたい気持ちでいっぱいである。

しかし簡単にミクラスの涙を流すわけにはいかない。
しかも推理が無駄すぎて泣いているようでは美しくレアなミクラスの涙の価値も下がろうというもの。
こうなっては簡単には泣けないのである。
これからこのブログを読んでこの作品を読む諸君に同じミスをさせるわけにはいかない。
ぼくが先頭を切って切り開いた道をやすやすと歩いてスマートな読書体験をしてほしい。
それでこそこのブログの記事を書いた価値もあるってもんよ。
諸君のためならわたしは盾にでも剣にでもなろう。
なんといってもミクラスの涙である。うるさい。

とにかく推理などしなくていいので
種明かしまで無駄な思考を介入させずに
文章の流れに身を任せて読んでいけばいいタイプのミステリなのだ。
後半、明かされる真実に存分に心揺さぶられればいいのである。
しっかりと心を揺さぶってくれるミステリなので安心して欲しい。
決して心地いい揺さぶりだとは言わないが笑

それではまとめていきたいと思う。

・イヤミスである
・泣き所がある
・母子愛の狂気を描いた作品
・狂気などの描写が苦手な人にはオススメできない
・非常に読みやすく活字初心者にもオススメ
・読書ベテランにとってもいいミステリである。
 

それでは今日はこの辺で。コメント欄でのネタバレは禁止でお願いします。