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ミステリー?否、悪夢の聖書 《ボトルネック》米澤穂信

こんな気持ちは湊かなえ「告白」以来・・・
どーもこんにわ。ミクラステリアスです。
本日は信頼と実績の米澤穂信先生のボトルネックをネタバレなしで推してみたいと思います。よろしくどーぞ。

感情を小説などに奪われる体験

「ボトルネック」をつい先ほど読み終えて立ち上がったぼくは
部屋をせわしなく行ったり来たり、かと思えば窓の外の夕日を眺め呼吸を忘れてみたり、
突然大声で「はぁ?穂信、はぁ?」と叫んだり。
そして言葉を失い床にヘタリこみ、思い出す言葉と言えば、「待って?・・・待って?」
部屋に一人でいたのではなかったら完全に狂人に見えたであろう。
完全に米澤穂信の毒されている状態、ていうかまぁ普通に狂人である。
時として傑作小説はこのように人を狂わせてしまうこともあるのである。
かの宇多田ヒカルもこう歌っているではないか。
「あんな約束もう忘れたよ 指輪も返すから 私の心返して」
そう、この状態である。米澤穂信よ、切実にはやく私の心を返して欲しい。
恋の歌だろそれは。読書と一緒にするな!この微生物風情が!との声が聞こえてきそうであるが
そんな状況に陥るとわかっていながらも人は恋と読書をやめられないのだから恋と読書は似た者同士である。異論は認める。
ちなみに指輪は返すくらいならメルカリで売る時代なので心だけの返還を求める。
これは米澤穂信に毒されているゆえの狂言なので、
普段のミクラスはメルカリで恋人との指輪を売ったりなどしないことは信じて欲しい。
それほどこの「ボトルネック」の毒は強い。そのことが伝えたいだけなのです。信じて。お願い。

パラレルワールド???否、「こころのどく」

☝上の解説をもう少しだけ大きなネタバレなしで拡張してみたいと思う。

高校1年生のリョウが崖からの転落で事故死した恋人の追悼に、事故現場の崖までやってくる。
リョウも同じように崖から落ちてしまったはずであるが、気が付くと見慣れた街にいた。
家に帰ると見知らぬ女、サキに出会うが、この家にリョウという人は住んでいないと言われる。
父も母も兄も街も家も同じなのにリョウがいた世界といくつか違うところがあり、そして
この世界にリョウは存在していないことになっていたのである。
リョウのかわりに家に住んでいたのはサキ。
ぼくが生れずにサキが生まれた世界で、
ぼくは死んでしまったはずの恋人、ノゾミと出会うことになる。

ここまでは語ってしまっていいと思う。その方が読書欲を刺激できるんじゃないかと!
というか亡くなった恋人とパラレルワールド暗示で簡単に予想できる展開ですね。
その通り。しかしこの物語のキモはそこから展開するあれやこれやそれやソイヤ!
なぜパラレルワールドみたいなところに飛ばされたのか?
なぜぼくの世界では死んでしまったはずの恋人が生きているのか?
疑問がページを次々めくらせてくれる!
気づいた時には完全に米澤穂信の毒が全身に回っており、すべての解答が出揃った時、
訪れる究極の選択とは。
そして僕は発狂したのである。
なんせこのブログ記事のタイトルが悪夢の聖書である。完全に発狂している。何のこっちゃ全然わからん。
そもそも聖書ちゃんと読んだことあるんかい。ないです。すいません。

ラストが衝撃。米澤穂信を甘く見ると毒で死ぬ。

この小説、基本的にラスト1点集中ものである。
途中の物語はよくあるパラレルワールドものでありがちな展開だし
ミステリ要素の真相も推理の余地は少なく謎を味わいつつ進む話ではない。
無我夢中でページをめくってしまう没頭感があるわけでもない。読みやすいけどね。
ただ、ラストを読んだときに心底驚くのは米澤穂信の伏線と設定の技量の天才具合である。
正直途中まで読んでる間は今回の穂信はありきたりでパッとしないな~結末次第ではハズレか?と思ってた。
が、とんでもない!
この物語で描かれる真のテーマは謎ではなかったのである。
物語の真の姿はまさにアンコウ!
・・・・・え?アンコウ?
そう、アンコウ。
アンコウって、あのアンコウ?
そう、あのアンコウ。
説明して?
まかせなさい。
アンコウは皆さんご存知のチョウチンが光るお魚さんですね。ギョギョ
あなたは小さなエビちゃんです。海中深く、暗い海の底で小さな光を見つけます。
まぁ綺麗。なんでしょう。こんな海の底に光る宝石でもあるのかしら。
すすすすっと光に誘われるように近づいていくあなた。
気づいたときには目の前にアンコウの大きな口が開いており、時、既に遅し。
ガバッと一飲みされてジエンド。ちゃんちゃん♫である。
まさにそんな予想外のエンドを迎えるのこの小説、しかしその驚きだけで済むほど米澤穂信の毒は甘くない。

この作者の「折れた竜骨」もそうなんだけど謎を含めて物語をグッと感情的に、
ある意味ドラマチックに仕上げる天才なんです。
そこが読後、いろいろと引きずる要因になってしまう。

読後、どうしようもないほどじくじくする毒

謎がこの物語の真の姿ではないとお話したように
謎がスッキリ解けて万事解決☆彡キラン みたいな小説ではない。
もはや解釈は人それぞれによって違ってくるような終わり方をしている。
つまり大事なところを明確に文章にせずに余韻を残して終わっているのである。
はっきりしない結末が苦手な人にはおすすめできない。
また読後もやもやすることを含め、感情を引っ張られることが苦手な人にもおすすめできない。
とにかく暗い話が苦手な人にもおすすめできない。
けれどそれも読書体験として楽しめる人にはぜひ読んでいただきたい小説である。

正直、これほどライトな始まり方から、
痛烈に自分自身の存在価値人間の感情と深層心理の表裏までもを

あぶりだした本書は傑作と言える。またその手腕は並大抵のものではなかった。

や~~~~人それぞれ解釈があると言ったってこれは相当まわる毒ですぜ、旦那。
ヘイ、承知しております。それでも素晴らしき天才が構築した練りに練られたミステリがお好きなら、
極上品でございますよ、イヤミスが好きだなんて旦那も通ですな、はははっははは。
これだけの上質な毒のお代は定価 ¥590 税別でございます。へへへへへっへへ。
お安くなっておりますぜ。ぐふっぐふふふふ

・ラスト1点集中型の小説ではあるが初めから最後まで読みやすい
・謎解きに頑張って挑戦する推理小説ではない
・究極のイヤミスである。苦手な人は注意。
・ラストの解釈は人それぞれ。
・病み期に読むとキツイと思う。
・オススメの傑作小説である。

それでは次回お会いしましょう~コメント欄でのネタバレも禁止でお願いいたします。