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《直木賞受賞作》ごった煮闇鍋傑作小説「流」東山彰良

読むべし。終わり。

その一言に尽きるのだがそれではブログの価値があまりにもないので
この素晴らしきごった煮闇鍋小説「流」をネタバレなしで紹介してみたいと思う。
本日はミラクステリアスがお送り致します。よろしく。(礼)

ミステリ・恋愛・青春・オカルト・歴史・戦争・異国
全てをぶち込んで仕上げた絶品闇鍋小説

闇鍋って知ってます?そうですよ、あれです。
メンバー全員で好きなものを持ち寄り全部ぶち込んで煮倒して箸で取ったものは絶対に食わないとダメというあれです。
たとえワラジが出てきても仏像が中から出てきても食べなくてはなりません。知らんけど。

この小説、東山彰良が一人で作り上げた闇鍋のような小説なのである。
・・・だめじゃん!!そんなの無理!!とか言わないで!まって!違うの!まって!ワラジは出てこない。
説明しよう。いや闇鍋とか言い出してちょっと後悔してる。選択を誤った。
でも書き直すのも面倒なのでなんとかこの闇鍋説で魅力を解説してみるので安心してくれたまえ、読者諸君。

ゴホン・・・え~なんといいますか、
このミステリ的展開を主軸に主人公17才の台湾人、葉秋生(イエ チョウシェン)の少年時代を描いた青春小説には
戦争、歴史、暴力、幽霊、そして大量のゴキブリ!!そんなものまで一緒に煮込まれているのである。いやまじで。
しかし料理人の東山の巧みな調理技術と、熱量の高い執筆スパイスにより絶品に仕上がってしまったこの闇鍋小説。
ゴキブリまでいい味だしてしまっているのである。そんなことある!?あるんです 笑
その上、直木賞まで鍋の底からこんにちわ 笑
とんだ料理人だぜ!東山!

一見堅物そうなあらすじではあるが痛快青春コメディテイストで進む物語

☝なんだか堅物そうでむずかしそうなあらすじじゃないか。
何を隠そう僕も最初はそう思っていたのです。
このあらすじから痛快青春コメディテイストを想像できるやつがいるだろうか。否、である。
むしろかなり重厚な歴史を交えた暗い読みにくい小説を想像していたわけですよ。
あんまり読むのに乗り気になれずに買ってから本棚に放置していたミクラス。
そんな読書好きにはあるまじき行為に及んでいたミクラスはひょんなことから台湾旅行に行くことになったのですよ、そうですよ、微生物たちとです。微生物も人並みに旅行を楽しんだりするのです。別にいいでしょそれくらい!
そうして台湾という国にちょっと興味を持ち出したミクラスはお得意のネットサーフィンでいろんなことを調べまくったのですね、台湾について。
いつのまにやら親台湾感情を育んでいたわたくし。

そんな折、本棚で次に読む本を探していると何やら台湾を舞台にした小説を発見、本書である。
こうなるといてもたってもいられず次は「流」じゃ~~~とベージをめくって行ったんですね。
飛び込んできたのはイキイキとした雑多で物々しいエネルギッシュな一昔前の台湾だった!
国は違えど同じように動く感情、そして異国文化、煌びやかでどこか懐かしい夜市。
発展途中の街を背景に縦横無尽に青春を謳歌する葉秋生。
ケンカをして恋をして幽霊にとりつかれゴキブリと相まみえるわけです。ほ~らコメディ。鍋の底からこんにちわ。

そしてたどり着く祖父殺しの真相と人と人を結びつける運命と覚悟のお話。
コメディというか秋生がどのような青春を過ごしてきたかを知っているからゆえに

正直ラストの真相には震え、なんという小説を見つけてしまったのだとしばらく放心してしまっていたミクラス。
納得の直木賞、傑作であることは間違いなし!

究極のバランスの上に成り立つ闇鍋の極意

この闇鍋、おっと間違えた。この小説、いろんなジャンルをこれでもかというほどぶち込んでごった煮したものであるが
それぞれの配合バランスは天才のもと調合されし絶妙さを誇っている。
戦争の話はしっかりとその現実を突きつけつつしっかりと重い。
しかし秋生の人生自体は戦争とは時間的距離もあるため、気楽なもんである。よってコメディタッチに書けるのである。
これで戦争の話が重くなりすぎない。
そして秋生も気楽に恋をする。しかし恋をしたら気楽にはいられないのが人間である。

これがまたキュートで愛しく切ないのだが絶妙な尺で長くないのにしっかりと秋生の感情をダイレクトに伝えてくる。
並大抵の文章力ではこうはいかないのだ。そう、文章がうまい。ビビるほどにな!
また時間軸をやや強引にずらして語る手法を要所でつかってくるため、過去、現在、そして未来までもを闇鍋にぶち込んできやがる。
それがまたぜひ味わっていただきたい魅力をたたえている。
未来から語る今の恋愛の話ってそれだけで惹かれる。
そうして辿りつく真相には人間の根底に流れる愛と覚悟と運命がギュッとつまっているのである。
あまり読書で涙を流すということはしない微生物のミクラス。
けれども、悲しくても切なくても愛しくても素晴らしい作品に出会ったとき、
心の涙がじんわりと心を濡らしてゆき読後放心してしまうことがある。
本書はしっかりと真相を知ったときに心がじんわりと濡れていくのを感じた作品である。
わたしは唸った。完全に降参である。このレベルの本は簡単には出会えない。
ミステリは謎と伏線に作者が一番情熱を注ぐゆえに人間描写はある意味、謎の価値にくらべると
あってなきがごとしの扱いをうける。特に本格ミステリはまあそれで良しとされる風潮がある。
けれども、「流」に関して言えばもはや人間ありきのミステリなのである。
そこが最大の魅力と言っていい。この真相に震えて欲しい。一緒にこの味わい深い闇鍋をつつこうではないか。
闇友になろう。・・・・全然違う意味になってしまったが。まぁいい。闇友万歳である。

人と時間の大きな流れと繋がりの中の個

後ひとつ言わせて欲しい。
それはタイトルである。
正直この小説にタイトルをつけろと言われてぼくが「流」というタイトルをつけるセンスはない。
残念だがもはや「闇鍋」しか思いつかない。恥である。
しかし東山料理人は「流」と名付けた。
読み終えて思うのはこの小説のタイトルは「流」がいい。もはや流意外考えられない!
これは読まなければわかないと思うが本当にベストなタイトルであると思う。
「闇鍋」などとほざいている僕は本当に自分のセンスを恥じるべきなのである。きつい。
僕は読後、「流」という漢字を好きになった。
実は読む前からかなり好きだったのだが、これからはこの小説を読んで「流」という漢字を好きになったことにしたいと思う。
そんな理由があったほうが文学的でかしこそうだからだ。
時間は全てを推し流していく。
その中を生きてゆきながら誰かの覚悟と信念に触れ、そして自分が流れの中でまた新しくどう生きてゆくのか。
この闇鍋小説に出会い、新たな価値観と物語に触れ沢山のものが僕の心に流れ込んできたことが確かな事実である。
そうして読後、僕は「流」という漢字を好きになったのである←

・さまざまなジャンルをぶっ込んだ青春闇鍋小説である
・文章力が高い作者ゆえに活字慣れした小説好き向け作品
・堅物作品ではなくコメディタッチでストーリーは進む
・真相を知ったときこの小説の真の価値が浮き彫りになる
・各シーンでときめきも切なさも愛しさもしっかりと感じ取ることができる
・オススメのおもしろい小説である!
本日はこの辺で!コメント欄でのネタバレは禁止でお願いします!